古事記・日本書紀の神様

古事記・日本書紀の神様

菊理媛神(くくりひめ)

菊理媛神(くくりひめ)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

くくり2
【別名】
菊理媛尊 菊理比咩神 菊理比売神 白山比咩大神(神仏習合の文脈においては「白山大権現」「白山妙理権現」「白山妙理菩薩」という名前で語られることもある。)

【ご神徳】
和合の神 縁結びの神 五穀豊穣 牛馬安産 山の神 海の神

【伝承地】
北陸地方一帯

【継続】
記紀における記載はない。

【鎮座】
白山比咩神社(石川県白山市) 白山神社(新潟県新潟市) 白山中居神社(岐阜県群青市) 日吉大社 白山宮 など

【解説】

日本書紀に出て来る謎の神

菊理媛神亦有白事。

菊理媛神が神話に出てくるのは、日本書紀の一書(あるふみ。異伝。別の伝承によれば、という意味)のこの八文字だけである。どのような神格や系譜を持っているか、全く語られていない。

この八文字が出て来る場面は、死者であるイザナミと生者であるイザナギが言い争う泉平坂(よもつひらさか)である。神産みで火の神、カグツチを産んだイザナミは女陰に怪我をしてやがて神避る。イザナミに一目会いたいとイザナギは黄泉の国まで行くが、その変わり果てた醜い姿を恐れ、逃げ帰ってしまう。姿を見られたことを恥じたイザナミは逃げるイザナギを追いかける。そして、泉平坂で二人は言い争うのだが、そこに泉守道者が現れ、イザナギに対し、イザナミの言葉を取り次ぐ。このときに、菊理媛神が「何か」言ったところ、イザナギはそれを褒め、素直に帰るのである。何を言ったかは書かれていない。ただ、イザナギに対してもの言える神様であるということは、イザナギと同等の神格を持つか、近しい血筋の神格を持つ神なのかもしれない。

「ククリ」はものごとを「くくってとりまとめる」が語源である。つまり、死者であるイザナミと生者であるイザナギの間をとりまとめたことに由来するというのが一般的である。

イタコとしての神格

菊理媛神はイタコの先祖とも言われている。
山中他界という思想がある。山は祖霊の宿る神聖な場所であり、みだりに踏み込んではならないとする考え方だ。つまり、山は異界、この世ではない場所なのだ。
菊理媛神は神避り、異界の住人のとなったイザナミの言葉をイザナギに取り次ぎ、二人の仲をとりもった。このことから、縁結びの神として知られている。

白山比咩大神との関係

また、神避ったイザナミは古事記においては「比婆山」に、日本書紀においては「紀伊国の熊野の有馬村」(花窟神社)に葬られている。どちらも山であることから、古来、山の神は女性であるとされてきた。これを山神信仰という。現在でも、山の工事で発破をかける際には女性は立ち入ることができない。女性である山の神が嫉妬するからである。

約三千近い白山神社の総本山である白山比咩神社は白山比咩大神を菊理媛神と位置づけている。しかし、白山比咩大神がなぜ菊理媛神と同一視されるようになったのか、はっきりとわかっていない。ただ、富士山、立山と並ぶ霊山、白山の女神である白山比咩大神と黄泉の国の住人となったイザナミの言葉を取り持つ女神、菊理媛神、どちらにも異界と深い関わりがあるといえるだろう。

■この神様に関連する主な神話
国生み-黄泉の国

文章:あさみ
挿絵:陸(りく)