古事記・日本書紀の神様

古事記・日本書紀の神様

御倉板挙之神(ミクラタナのかみ)

御倉板挙之神(ミクラタナのかみ)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

御倉板挙之神(ミクラタナのかみ)
【別名】
御倉板擧之神・御倉板舉神

【ご神徳】
開運・五穀豊壌など

【伝承地】
なし

【継続】
なし

【鎮座】
加良比乃神社(三重県津市)
【解説】

わずかな記述に隠された謎

御倉板挙之神(ミクラタナの神)は古事記にのみ登場する神様です。
しかもその記述はたったの数行……しかし『三貴子誕生』の場面でとても重要な役割を成し、かつ大きな謎を残しています。
では物語を読みつつ、御倉板挙之神とはどんな神様なのか考えてみましょう。

亡き妻の住む黄泉の国から帰ってきた伊邪那岐命は、身の穢れを祓うため水辺で禊をします。
着ていたものを脱ぎ捨て水に浸かると、伊邪那岐の身体から様々な神が生まれました。
(中略)
左の目を洗うと天照大御神が、右の目を洗うと月読命が、次に鼻を洗うと須佐之男命が生まれ、伊邪那岐
「私は多くの子を生んだが、最後に三柱の貴い子を得た」と大いに喜びました。
そして首飾りをゆらゆら揺らし、天照大御神に与えて言います。
「そなたは高天の原を治めなさい」
この天照大御神に与えられた首飾りの玉を『御倉板挙之神』といいます。
続いて伊邪那岐月読命に「そなたは夜の国を治めよ」と、須佐之男命には「海原を治めよ」と告げました。

物語から読み取れるのは、
一、三貴子の中で天照大御神にのみ首飾りが与えられたこと
二、その首飾りの玉は神として名付けられるほど重要なものであること
美しく磨かれた宝玉は古代から貴重なものとされ、権力の象徴になっていました。
それを授けるということは権力や地位を譲るということ……つまりこの場面では、
国生み・神生みの偉業を成し遂げた伊邪那岐の後継者として、天照大御神が選ばれたということなのです。
御倉板挙之神は世継ぎの儀式を演出する重要なアイテムでした。

ただし、天照大御神から天孫・邇邇芸命、そして歴代天皇へ受け継がれた宝は御倉板挙之神ではなく、八咫鏡・八尺瓊勾玉・草薙剣の三種の神器です。
これは一体どういうことでしょう? 御倉板挙之神は何処へ?
謎の解明は次の項目に続きます。

神棚の起源?

今度はご神名について検証していきます。
『御倉(みくら)』は倉、一般的には穀倉と解釈されています。
『板挙(たな)』は字面の通り、板を頭上高くに挙げて設えた棚です。
つまり『御倉板挙之神』は穀倉の棚に座す神……という意味になります。
天照大御神は譲り受けた首飾りを穀倉の棚に安置したのです。
豊かに実った五穀を見守っていただくため、次の年も豊作になるよう祈るため……。
たくさんの子を生んだ父神の生命力にあやかろうとしたのかもしれません。
このように「権力の象徴としての首飾り」から「祈りを込めた祭具」へと役割が変化したために天孫へ引き継がれることなく、高天の原の穀倉を見守る存在へとなったのですね。

ちなみに「棚上にご神体を祀る」という形式から、御倉板挙之神は神棚の起源であるとも言われています。
天照大御神や古代人が行ったであろう慣習が今日にまで受け継がれているというのは、なんとも感慨深いものがあります。

■この神様に関連する主な神話
三貴子神話
【挿絵解説】伊邪那岐から天照大御神へと与えられる御倉板挙之神をイメージしました。
【参考資料】
(文章参考) 古事記
(挿絵参考)古事記