アイヌ・琉球の神様

アイヌ・琉球の神様

ヒヌカン(火の神)

ヒヌカン(火の神)

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ヒヌカン
【別名】
御三物(ウミチムン)、御釜(ウカマ)、ウカマガナシ、(奄美地方において)ヒニャハンガナシ、ウチガミ……など

【ご神徳】
家内安全、子孫繁栄、厄除け、無病息災など

【伝承地】
沖縄・奄美諸島

【継続】
なし

【鎮座】
沖縄・奄美の各家庭の台所

【解説】

琉球のかまどの神

沖縄や奄美諸島のお宅にお邪魔すると、台所に白い香炉と花瓶が設えられているのを目にすることがあります。
これは『ヒヌカン(火の神)』のための祭壇。
今でこそ減ってきてはいますが、琉球王国成立(15世紀)以前からあったとされる南西諸島独自の神祀りの形式です。

ヤマトやアイヌ同様、琉球文化圏でも火は文明の発達に欠かせないものでした。
自然に手を加え、道具を作り、そして調理をするための火……中でも最も身近な『かまどの火』を琉球人たちは大切にし、自分たちの生活を見守っていただこうと考えました。
古い時代のかまどは3つの石に支えられていたので、ヒヌカンもはじめはこの3つの石をご神体として祀られました(御三物という別名はここからきています)。
それがいつしか現在のように、台所の隅に特別な道具を置いて祀るようになります。
地域や家庭によって多少違いはありますが、ここでは沖縄の一般的な例を見てみましょう。
ヒヌカンの祭壇に常設されるものは……
・御香炉(ウコーロー)
・平御香(ヒラウコー/通常の線香6本がひとまとめになった板状の線香)
・花瓶(チャーギ、クロトン、榊などの常緑樹を飾る)
・湯呑み(毎朝、新鮮な水を入れる)
・高坏、あるいは平瓮(塩を盛る)
・盃(泡盛を注ぐ)
さらに旧暦1日と15日には『ウブク茶碗』というお茶碗3杯に炊きたてのご飯を盛ってお供えします。
上記の器は全て白色です。これは神様の衣服が白いことからきているのだとか。
コンロの近くに設けるのがベストですが、狭いようなら別の場所でも構いません。

ヒヌカンはこの祭壇に年末年始を除いて毎日鎮座し、家族の安全と健康を守っています。
台所という場所柄か、はたまた女性が神官を務めていた琉球という土地柄か、ヒヌカンは女性が管理する習わしとなっていますが、家族の者だったら誰でも拝むことが出来ます。
逆に他の家のヒヌカンを拝むことは許されていません。
各家庭に1柱、自分たちだけの神様をお祀りしているのですね。

神の国やご先祖様と繋がる

琉球文化圏では東の海の彼方、太陽の昇るところに『ニライカナイ(ネリヤカナヤ)』という神々の国があると言われています。
琉球開闢の女神・アマミキヨをはじめ多くの神がここから琉球の島々を来訪した伝説がありますが、ヒヌカンもまた太陽神から人間への贈り物としてやって来たそうです。
そんなヒヌカンも年末年始は故郷へ里帰りします。
旧暦12月24日、ヒヌカンがニライカナイへ帰る日。家の人々は大掃除をし、土地の神や家屋の神に1年の感謝を伝える『屋敷拝み(ウガミ)』という神事をします。
その後ヒヌカンにも感謝を伝え願い事をし、平御香を7片焚いて送り出す神事が『御願解き(ウガンブトゥチ)』。
里帰りしたヒヌカンは神々に家族の1年の様子を伝え、その報告によって神は更なる幸福を人間にもたらすのです。
ですから、ヒヌカンの前では悪口を言ってはいけません。神々に悪い心が筒抜けになってしまいますから……。
ヒヌカンが家に戻ってくるのは旧暦1月4日。
またお供え物と平御香で『火の神迎え(ヒヌカンウンケー)』をするのです。

神々と家族の仲とりもちとして働くヒヌカンですが、ご先祖様のお墓に繋がる『お通し所』としての役割もあるので、お墓が遠くにあってなかなかお参り出来ないという場合でもヒヌカンの御香炉を通してご先祖様にお祈りすることが出来ます。
かまど神と神棚と祖霊舎・仏壇の機能を兼ね備えたハイブリッドな存在です。

【挿絵解説】
服装はユタ(沖縄の女性シャーマン)がモチーフ。ヒヌカンの前では悪口を慎むべしというしきたりから「しーっ」のポーズになりました。

【参考資料】
(文章参考)沖縄民間伝承、奄美民間伝承
(挿絵参考)沖縄民間伝承、奄美民間伝承

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